ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

「令和時代の麻酔科医の行動規範」という時代錯誤

こんにちは、コッカーマリンです。

 

こんなのが麻酔科学会から出されました。

2019 年 11 月 29 日 制定

麻酔科医の行動規範

公益社団法人 日本麻酔科学会

麻酔科医は多くの場合、中央診療部門でチーム医療のリーダーとして行動す ることが求められている。しかし、近年、麻酔科医の働き方に対する厳しいご 批判もあることから、2000 年に採択された日本医師会「医の倫理綱領」、2003 年に本学会が制定した「麻酔科医倫理綱領」をもとに、改めて本学会に所属す る麻酔科医の行動規範を制定する。

1.最善の医療を提供すること

麻酔科医は、本学会の理念と倫理綱領をよく理解し、患者が質の高い最善の医療を享受できるよう努める。

2.関連領域で活躍すること

麻酔科医は、手術等における麻酔と全身管理を中心として、救急医療、 集中治療、痛みの治療、緩和医療、在宅医療など幅広い領域において、 すべての患者の生命と尊厳を守るとともに、本学会で定めた指針を遵守 し、患者に安全で快適な医療を提供する。

3.周術期に活躍すること

麻酔科医は、麻酔中のみならず、手術前後の周術期における全身管理を 本務とする。術前においては患者の情報を的確に把握し、麻酔法等を適切 に説明する。術後においては術後痛を把握し、主治医と協力して合併症を把握し治療する。

4.チーム医療のリーダーとして活躍すること

麻酔科医は、チーム医療のリーダーとなり、他診療科医師や医療従事者 と良好な関係を構築し、患者中心の医療を実践する。

5.常に学習し教育すること

麻酔科医は、常に専門領域だけでなく関連領域における最新の知識と技術の習得に努める。医学生や看護学生のほか関連領域の学生の卒前卒後教 育に協力し後進を指導し、社会に対する麻酔科学の啓発と普及に努める。

 

公益社団法人 日本麻酔科学会

理事長 小板橋 俊哉

令和時代の麻酔科医の行動規範

麻酔科医は、医師である前に人です。麻酔科医は、医師として、また人としての 倫理的な行動規範を全うした上で、さらに麻酔科医としての行動規範を持つべきで す。洋の東西を問わず、正義はひとつではありません。個人の正義が相対すると き、お互いを尊敬し、折り合いをつけて共存することこそ、現代の人として望ましい行動です。

現代の麻酔科医は、単に手術中の麻酔管理だけが本務ではありません。身体的に も精神的にも侵襲の大きな処置を患者が受けるとき、その苦痛を和らげることこそ 現代の麻酔科医の本務です。そのため、手術中はもちろんのこと、その前後の周術期においても、チームのリーダーとなり看護師や薬剤師など医療関係者と協力し、 薬物やことば、手、器具を総動員してその苦痛の根源に対処するべきです。具体的には、鎮痛薬や鎮静薬、循環作動薬などの使途に精通し、適切でわかりやすいことばが使えなくてはなりません。患者と対面するだけでなく、復治を目的として、侵襲を加える外科的・薬物的・放射線的行為が最大限にその効果を発揮できる環境を 整えることも重要な任務です。これらの麻酔業務に相当する対価を得るのは正当ですが、過剰な報酬を要求する行動は避けるべきです。

最後に、生涯にわたって学習して新しい知識や技術を習得し、後進を育成するこ とも、また、一般社会への麻酔科学の情報発信も麻酔科医の大切な任務です。社会 における麻酔科医の地位をさらに向上させるため、この度の行動規範を作成しまし た。

 

 

これをわざわざ麻酔科学会理事長名で出すことにちょっと驚きました。

*ちなみに読みやすくするために多少の改変、赤字とか太字は僕が加えたものです。

 

こんなのわざわざ出すにはなにか背景があるんだろうな、と思うのが普通です。

このことじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう。 

www.cokermarin.com

 

普通に読んだら、「他から文句言われてるから、麻酔科学会理事長名で正式に学会としてフリーでたくさん稼いでるやつを否定します」ということですよね。

 

"これらの麻酔業務に相当する対価を得るのは正当ですが、過剰な報酬を要求する行動は避けるべきです。"

 

"個人の正義が相対すると き、お互いを尊敬し、折り合いをつけて共存する"

 

上記の2つの文言から僕が感じたことは以下です。

「個人の正義が相対する時」=

  1. 病院の普通の勤務医がもらっている給料よりフリー麻酔科医のもらっている給料が単位時間あたりですごく高いので、相手の病院なり医者がそれは困るという。
  2. フリーランス麻酔科医はそれはそれは正当な給料だという(それは需給の関係もあるでしょう)。

この1と2が相対しているんです。

かっこいいこと言っていますが、まぁ単にそういうことでしょう。

 

で、麻酔科学会としては1の側に立ちますよ、ということですよ

ね。折り合いをつけろ、というよりも。

 

なんでそんな需給のアンバランスが起きるのか?という問題をもっと考えるべきだと僕は思いますがどうなんでしょう。

まともな麻酔科医が集まらんような病院でオペをやるのがそもそもの問題だとか、そういう主張はちゃんとやってるんでしょうか。

病院の集約化はもっと大きい話なので難しいとしても、麻酔科側でもっとできることはあるでしょう。

 僕なんかはこういうのが一つの解決策だと思いますけど。

www.cokermarin.com

 

あと僕がいつもこういう学会の姿勢が嫌なのは、すごく社会主義的というか、労働者脳のというか、そういうのを感じるからなんですよね。

麻酔科学会の考えとしては勤務医は全員だいたい同じくらいの給料で働くべきだ、といういうわけですけど、他の科の開業医がむちゃくちゃ儲けるのはOKだということで。

 

なんで開業医が儲けられるのかというと、開業って起業であって、起業で成功する最大のポイントって需給のギャップを突くことでしょう?

あとは医者の場合「医師免許」という参入障壁もありますけど。

 

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フリーランス麻酔科医が需給のギャップをついて儲けているとしたら、開業医と何が違うんでしょう。

開業みたいにリスクがない?

そんなことはありません。「根無し草」みたいになって出口戦略が立てにくくなるリスクはあるし、麻酔のアルバイトしたことある人なら分かると思いますが、慣れない病院で麻酔やるのってむちゃくちゃストレスありますよ。すごく気疲れします。

開業医くらい稼ぐまでフリー麻酔科医をやったら大抵の人はメンタルやらます。

長続きしない。

フリー麻酔科医なんてクソみたいな仕事だってみんな分かってやってるので(全員とはいいませんが)、何年かだけって決めてやっている人が多い。

実際フリー辞めて常勤に戻る流れは学会による弾圧なんてなくてもすでに始まっていました。

 

付け加えておくと、フリー麻酔科医は開業医さんみたいに多額の経費認められませんから、手取りは全然大したことない。

要するにしんどいし実は大して儲からんし、麻酔科学会やら大学病院連絡会やら厚生省がわーわー騒ぐほど悪玉にはなりえないんですよ。

 

フリー麻酔科医と開業医って

患者の需要と医療の供給のギャップで儲けるか、

医療機関の需要と医者の供給のギャップで儲けるか、

そういうビジネスモデルの差はあるでしょうね。

医療の世界では前者はOK、後者はNGという結論がとりあえず出たのだと考えることはできそうです。

 

ムラ社会ですから。

特に麻酔科なんてムラの機能が正常に働いていてこその存在ですから、ムラの掟に逆らうのは駄目ですよ、ということかもしれません。

 

麻酔科学会もむしろそう説明したら良かったのに、と思いますけどね。

 

「令和時代の麻酔科医」がこういうふうに働くべき

なんて考え自体が申し訳ないですが老害の考え、時代錯誤だと思わざるを得ません。

もうリタイア近いおじさんおばさん(おじいちゃんおばあちゃん)麻酔科医が勝手に規範みたいなの決めてはいけませんよ。

 

これまでとこれからは違うんですよ、決定的に。

 

今からずっと麻酔科医として、医者として長く生きていかなければならない今の麻酔科医がどう考えてどう行動するか、そんなのは自分たちで決めます。

その結果そのものが、「日本の麻酔科医」のありのままの姿だと思いますが。

 

みなさんはどう思いますか?