ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

将来麻酔看護師と麻酔科医が一緒に仕事をするようになったらどうなるのか。麻酔のレベルが下がるのか?

こんにちは、コッカーマリンです。

 

アメリカやヨーロッパ、アジア、つまり世界中どこでも麻酔看護師がれっきとした職種として存在していている国は多いです。

 

麻酔看護師はどんなことをやっているかというと、アメリカなんかでは州や地域によって完全に麻酔科の医師のようにふるまっているところもあります。

まぁ日本の周麻酔期看護師なんかよりだいぶなるのは大変みたいですけどね。

給料も日本の勤務医くらいあるみたいです。

 

ただ、世界的にはどっちかというと麻酔科医が複数の麻酔看護師を研修医をみるように管理して麻酔を請け負う、という形が主流のようです。

日本でも多分そうなるでしょうね。

 

例えば昼間10列20件くらいしていたオペ室があったとします。

指導役の麻酔科医が7人くらい、研修医+専攻医が10人くらい

でまわっていたのが、

麻酔科医が4人、専攻医2人、看護師8人くらい

で回るようになるという感じでしょうか。

どちらも当直の麻酔科医は一人いるでしょうけど。

 

上の設定で、なんで管理役の麻酔科医が少なくなっているかというと、今は指導しないといけない医者の中に、スーパーローテの研修医みたいなのも含まれてたりするので手がかかるんですよね。

専門看護師ができたらきっと何年も麻酔ばっかりやるようになるので、普通の麻酔症例ならほぼ一人で全部できてしまうでしょう

 

管理役の麻酔科医ですが、麻酔看護師制度の導入期はしっかりと麻酔導入や抜管をみたりするでしょうけど、そのうちなんにも起きないからモニターだけ他の部屋でみとくとか、報告だけ受けるみたいになると思います。なんかあったら出ていくんしょうけど。

 

スーパーローテの研修医や専攻医をたくさんみたからわかります。

何年もそこで麻酔をやってる人がいたとしたら、資格とか関係なくいつも問題なく麻酔できるようになりますよ。

まぁ人によって多少の出来不出来はあるでしょうけど、超慣れた専攻医みたいな感じになるわけです。

 

そうなったらどうなるか。

麻酔科医と麻酔看護師の業務の線引が曖昧になるでしょう。

単に立場としてそこにいないといけないからいるけど、べつに何もやってないオジサン、みたいな感じになるわけです。

 

業務として明らかに違うことをやっていないんですからね。

まぁブロックとか脊椎麻酔とかは麻酔科医がやるんでしょうけど、麻酔全体からみたらそれってほんの一部ですから。

 

麻酔をかけられた患者さんは誰かがみとかないといけないんですよ、それは間違いないです。

結局だれがそれをみるか、という話で、医者じゃないくてもいい、看護師でいいとなる、麻酔科医はこれまでほどたくさんは頭数必要ないけど看護師のやる麻酔の管理役としていてくれ、というのが医学界の要望ということです。

心臓麻酔とか、移植麻酔とか、例外はありますけどあくまで数は少ない例外。

つまんない仕事だと思います。

 

そして麻酔看護師と麻酔科医のやっていることは普段はほとんど一緒で、あんまり目に見えない、トラブルがあったときの責任取る役目としての麻酔科医みたいな存在意義になってしまうような気が僕はしています。

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海外ではうまくいっているじゃないか、という声があるでしょう。

でもそもそも海外でうまくいっているのか、という問題があります。

アメリカの麻酔看護師と麻酔科医のConflictというのはかなり根の深いものがあるそうです。

 

日本特有の状況を考えてください。

海外と比べて日本は医療費のGDPに対する比率が高すぎ、まぁそれは高齢化と国民皆保険制度が原因なんですが、とにかく医療費の抑制が今後どんどん進んでいくでしょう。

医療費、削れるものがあるならどんどん削れ、という状況です。

給料の高い麻酔科医でなくても、看護師でやれる?だったら看護師にやらせよう、となるのは自然な流れです。

 

加えてフリー麻酔科医の問題で麻酔科医が医学界から基本的に嫌われている、そして麻酔科学会が麻酔科医の仕事を全く守る気がないということからも、今から職業として麻酔科医を選ぶのは相当厳しいとやはり思わざるを得ない。

一旦麻酔をするという仕事を看護師に渡してしまったら終わり、もう医者の仕事としてはすごくマイナーなものになっていくのではないでしょうか

 

普通に考えて、「このおっさん医者っていうだけで麻酔俺の方がうまいやん」って思っている麻酔看護師みたいなのと一生一緒に働きたいですか

 

若い専攻医みたいなのを教えながら一緒に麻酔をやるというのはいいんですよ、その専攻医は若い日の自分であり、その専攻医にとっても僕は将来の自分なわけで、いろいろとやりやすいんですよ。

一緒に働く人間と思いを共有できる、これは大変重要なことです。

 

いくら出来ない専攻医でももともと医者として育ってますからね、麻酔を普通にしていても思いつく疑問点が生理学的なこと・学問的なことだったりして、あー僕もそんなこと思っていたよなぁみたいなこと感じたりするわけです。

 

麻酔看護師はどこまでいっても看護師ですから、そういう意味での共感を感じる場面はあまりないんじゃないかと想像します。

うまいこと挿管やらラインとるけど、頭のなかは(*僕らからみると)空っぽ、そんなんでしょう。

キャリアも交わることないし。いろいろ言いにくいこともある。

 

だから麻酔看護師がでてきたら日本の麻酔の全体的な管理のレベルが下がる

いや、そんなことはないでしょう。あったとしても誤差の範囲ですよ。

何度も言っていますが麻酔の薬やら麻酔に使うデバイスが良くなって、オペの方も侵襲が減っていたりするんです。

麻酔看護師に麻酔をされたからといって患者さんが不利益を被る、ということは考えにくいです。

 

そのへんが麻酔科医の将来が暗いという最大の理由でもあるんですが、とにかく今から麻酔科医になるという道を選ぶなら、相当覚悟して望まないといけないということは言えそうです。