ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

麻酔科学会認定並列麻酔基準で「麻酔科医の生産性」が上がる

こんにちは、コッカーマリンです。

 

ジェレミー・シーゲルの「株式投資の未来」という本を読んでいたら、「生産性」という言葉が出てきました。最近よく聞くやつですね。

 

人口構成が高齢に傾き、労働力不足になるなかで一つの解決策として「生産性を高めれば解決するのではないか」という文脈ででてきたわけです。

 

なるほど、政府が高齢化先進国の日本で「生産性」という話を出すのは当たり前なんだなぁ、とか思いました。

 

医者に生産性の話ってあんまりそぐわない気がするんですが、あえて病院経営を会社経営として考えてみると、「生産性」というのは定義できると思います。

 

それって要するに「儲けられる医者」ってことですよね。

今の医療保険制度の仕組みの中で売上を上げられるかどうか、ということになるわけですが。

 

もちろん売上にならなくてもたくさん困っている患者さんを診たら生産性高いと思うんですけど、いまはまだ病院って市場原理で経営されていますので、現状そういうのは生産性が高いとはいえません。

 

内科医なら同じ時間にたくさん患者さんを診られる、評判が良くて患者さんが集まってくる、これに尽きるでしょう。

本を書いている、テレビに出たことある、いい大学出身である、留学経験あり、なども患者さんが集まるポイントです。

やっぱり「なんかすごそうな経歴で、実際会ってみたらすごく優しい」みたいなのが一番ですよね。

あと、なんでもある程度ちゃんと診られる、というのも重要かもしれません。

 

外科医なら、やはりオペをたくさん集められて、そつなくたくさん症例をこなし、術後も問題が少ないということが生産が高いことになると思います。

外科手術は1人ではできないので、いつも一定数の若手がいないといけないので、若手が集まるような人間的魅力も必要でしょう。

生産性が高い外科医というと、オペが上手くて、新しい技術を貪欲に身につけようとする、そんなイメージがあります。

 

麻酔科医はどうでしょうか。

例えば麻酔がうまくて、患者さん入室からVライン、Aライン、挿管、CV、PAカテ挿入全部含めていつも30分以内で終わる、みたいな技術はあるとは思いますがちんたらやって1時間かかっても30分の差しかありません。

その麻酔科医がうまくてもそれで心臓手術をそこで受けたいと思う人が増えるわけではないのです。

若手が集まるかどうかに関しても、麻酔が上手いからといってその人のところで勉強したいと人が集まるなんてことは現状あんまりないようにみえます。

患者さんにすごく評判がいい麻酔科医、ってのもピンときません。

麻酔の技術なんてのは「生産性」にあんまり関係ないように僕には思えます。

 

とどのつまり、経営者からみた生産性が高い麻酔科医というのは

たくさん麻酔をかけてくれる医者

ということになるんではないでしょうか。

同じ給料で、同じ時間あたり、たくさんの症例を麻酔してくれる、それだけ。

 

麻酔科医にとっては辛い現実ですが、やはりその点をしっかり認識することは大事だと思います。

ぐちゃぐちゃ言わずに、黙ってたくさん麻酔をかければいいんです。

そういうインフラ的な立場だからこそ、病院にとって重要なのかもしれませんしね。

 

麻酔科医が足りなくて、すぐに数が増えない以上、麻酔科医の生産性を上げないといけないわけですが、その議論が全くされなかった結果が

「周麻酔期看護師」

なのではないかと僕は思っています。

 

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歯科麻酔科医の存在も問題だと思います。

専門医制度をいじってフリー麻酔科医を撲滅しよう、なんてくだらない事をやる前に麻酔科学会は麻酔科医の生産性を上げる議論をするべきだったのだと思います。

 

同じ人員でたくさん麻酔をするには「並列麻酔」をやるしかないわけですが、今まで並列麻酔というのは忌み嫌われ、タブーとされてきました。麻酔は麻酔科医による絶え間ない監視がなければ安全ではないというタテマエがあり、「並列やってますよー」とか麻酔科医が何人かいる場所で言っちゃったりすることはマズイのです。

実際には何もできない研修医を3人位つかって実質並列麻酔をしていたとしても、です。

 

今は麻酔の薬もよくなり、オペも侵襲が下がり、モニターも携帯できるものが出てきたりして並列麻酔をやりやすい条件は揃ってきていると僕は思います。

ただし、めったに問題が起こることはなくてもその場にいないと一瞬判断が遅れて問題がおきる可能性というのはあります。実際にはそこにいたとしても起こった問題まで、「いなかった」のを原因にされては困る。

 

なのである一定の並列麻酔可能基準を麻酔科学会が示してくれれば、問題が起きたときにそれを根拠に言い訳ができるのでありがたいんですよね。

 

看護師に麻酔の仕事を奪われないように考えるのなら、そういう議論がでてもいいと思いませんか。

要するに、僕ならこれまでの給料で麻酔看護師使って二列麻酔かけるなら、自分で二列並列して給料を1.5倍もらったほうがいいと言っているわけです。

 

もしかしたら「麻酔科学会認定並列麻酔基準」を満たさずに並列しまくっているフリー麻酔科医をも撲滅できるかもしれない。

並列麻酔基準は、オペ室同士が近い、いつでも携帯モニタでモニタできるようになっている、2例目の導入開始は1例目の手術開始後から、などいろいろ考えられます。

 

ずっと部屋から出ずに麻酔をちゃんとみなければならない、と教わってきた感覚としては違和感はもちろんありますが、医療に進歩に合わせて麻酔科医の働き方もアップデートしなければならないのではないか、と最近よく思います。

それが麻酔科医にとって「生産性を上げる」ことではないでしょうか。