ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

なぜ麻酔科の医者の給料はいいのか

こんにちは、コッカーマリン(@losgenedoctor)です。

 

医療系の職業でない人に「麻酔科です」とかいうと、以前は?って顔されることも多かったですが、最近は「大変な科らしいですねぇ」とか言われることも多くなってきました。まぁ何をやっているのかはよく分かっていないんでしょうけど、麻酔科医不足とかニュースでもでてきますもんね。ドラマで「お立ち台〜」とか言ってた人の影響も大きいかも。

 

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一方外科系の医者と更衣室とかでちょろっと話すと、「フリーとかってホントに儲かるんですか」的な話がでることが多いです。麻酔科医が充足してる施設だと「ほんとに麻酔科医って足りてないんですか?」とか聞かれたり、まぁいろいろです。そういうときは「フリーとかって一時は増えたけど最近はあんまりはやってないみたいですけどぉ」とか「麻酔科医増えたけど当直ばりばりできる人はあんまり増えてないからどこも大変らしいっすよぉ」とか適当に答えてます。あくまで地域とか施設によるからなんとも言えないんですよね。

とにかく看護師も他科の医者も、この世界の人間は麻酔科医が儲かるって思って見てる人多いです。

 

そして実はそれは当たりです。

勤務医であってもバイトが他科と違って週に1日許されてたり、バイト代が高い、または常勤の病院の基本給になんらかの「手当」が追加されていたりして、大学病院の専門医クラスとかだと年収2000万近くある場合もあります。他科じゃあんまりないでしょう。

 

そもそも患者さんは病気を治してもらうために病院に来ているのであって麻酔をしてもらうために来ているわけではありません。なのに腫瘍を取ってくれる外科医より麻酔をする医者が一番給料がいい。

 

なぜか?

この間バイト先で麻酔していてふっとその理由が分かりました。

僕は一日その列の麻酔をはじめから最後まで一人で全部やっていたんですが、外科の先生たちをみていると、3-4人くらいの先生がオペに入り、周りで多少入れ替わりながら4人位の先生が見学したりだべったり標本を見たりしていたんですよね。その日の麻酔料金はオペの点数の1/3くらいでしたが、麻酔に使った薬は全部別に請求できるので持ち出しは挿管チューブくらいでそれは1000円もしません。麻酔器や麻酔モニターは何百万円しますが、10年くらいは使うので一日あたりの費用はほぼ無視できる金額でしょう。一方外科は持ち出しになってしまう機器がかなりありますので、点数の差以上オペ点数では儲かりません。

外科がオペをもってこなければ麻酔もいらないのですが、今の時代ある程度まともな病院なら麻酔科医がいなければ外科のオペできないので、完全に対称性があると考えられます。

病院の利益がオペ室で生み出されると考えると、オペ室では麻酔科の医者は生産性が高いと考えていい。麻酔科の先生は自虐的に麻酔なんて点数低いから、とかいうけどいわゆる儲かるオペ以外では麻酔科での単体の儲けは結構あると思います。

そして何より麻酔科の医者がいないとオペができない、それに尽きます。

 

そういえば近くに水道屋さんが住んでるんですが、やたらといい車乗ってるんです。マセラティとメルセデス・ベンツ。さらに最近キャンピングカーを新しく買ってました。何が言いたいかというと、「ライフラインを握ると儲かる」ということなんですよね。

麻酔科ってまさに外科医療にとってのライフラインなんですよね。

その業者さんでは無いんですが、うちの水道工事をこないだ頼んだんです。5つくらいに見積もりとったら値段がびっくりするくらいにバラバラなんですよ。2倍以上違う。高く出してきたところがあるということは、すなわちそんなに高くで契約する人が一定数いるってことなんですよね。

水道が使えなければ生活できないのでみんな専門家に頼むんですが、良く分からないのであんまり調べず頼んじゃうんでしょうね。ライフライン関連の業者って免許とかあって新規参入すごくしにくいから市場原理働いてません。

 

家に住むなら水道を通さないといけないように、オペをするからには真っ先に麻酔科医を確保しなければならないということになっているので、水道業者よりもっと狭い業界である麻酔科にはどうしてもお金がかかってしまう。

大きな病院が儲けるにはたくさんオペをやるしかないので、麻酔科が黒字の首根っこを抑えてしまっているわけです。麻酔科医が正味どれだけの数必要なのか、というのは他からは実は見えない部分でもあり、首根っこを抑えられている病院側はどうしても高い給料を払わざるを得ない。

 

麻酔科の医者ならずとも麻酔をかけさせる(麻酔看護師とか)、オペが儲からないようにするなどのことが起きない限りこれは変わらないと思います。

機構専門医へ移行することを利用して、学会の一部が厚生省と一緒になって麻酔科の人員配置の権限を握ろうと画策していますが、そんな小さいことをやってもおそらく難しいでしょう。専門医を捨てる人の増加、麻酔科医になりたい人の減少という結果に終わる可能性が高い。麻酔科の人件費はさらに上がることになります。

 

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麻酔医療の経済的な本質をみて、医局の垣根を超えた抜本的な改革が麻酔科学会にできるでしょうか。

それができなければ麻酔看護師とかいうアホな制度ができる日がくると思います。

 

 

違った方面から考察した記事です。

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