ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

教授たちの気付いていないセントラルドグマの話の本質

こんにちは、ロスジェネ勤務医(@losgenedoctor)です。

 

 ちょっと前Twitterで「雄が雌を追い回すセントラルドグマ」という話題がありました。

 

 

URL先は、有名な外科医の教授が、外科医のなり手が少なくなった現状を鑑みて書いたエッセイです。外科医不足はずっとあの界隈の話題であり続けているようです。

この先生は、外科医のなり手が減ったのは、仕事がキツいからとか、しんどさに比して給料が少ないからではなくて、外科医になるタイプの人間の根源的な欲求を満たせる場所が減っているからだ、といいます。

その根源的な欲求の部分を「オスがメスをを追い回すセントラルドグマ」と表現したわけです。

 

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実はこの教授先生のエッセイの内容自体には僕は同意で、やはり外科手術などは仕事自体が面白くて魔力があって、それに惹きつけられるタイプの人間がある一定数いて成り立つものだと思います。

患者の体を蝕む悪党がいて、外科医として数々のリスクを背負ってそれでも打ち勝ち悪いやつを実際にその手で取り出す。また次の日も新たな強敵が現れるが、助けを求める患者のために、悪党をまたやっつける戦いに赴く。

麻酔科の僕からみても、どう考えてもやりがいのある仕事だと思います。

だから労働条件とか考えずに外科医になる人がずっといたんだと思います。

 

 

このエッセイのセントラルドグマのところだけに反応して、この教授先生自体を批判するような声があったようですが、この話の本質はそこではないと思っています。

そんなに遠くではない昔まで、そんな風に外科医になる人がずっといて、ほとんどの人は満足して医者人生を送っているのを忘れてはいけません。

 

雑草外科医先生も自分でこういう方向に火が上がること見越してツイートしたくせに、炎上したら「批判はおかしい」っていうの、ちょっと変だなと思いますけど。 

 

 

要するに 、外科だけじゃないですが、医者の仕事が昔よりセクシーじゃなくなっているということに尽きるんじゃないかと思うんですよね。

外科でいうと昔だったら属人的だった超絶技術みたいなものが、今は各種の止血剤、自動吻合器、ナビゲーションのシステムや内視鏡の装置の進化により、どんどんコモディティ化しているのだと思います。

 

以前こんな↓エントリーも書きましたが、麻酔科の世界なんて顕著で、この20年で麻酔はとても安全に、そして仕事としてはつまらなくなりました。

www.cokermarin.com

 

安全になったからもちろん医療としてはいいことなんですが、やはり医者としては仕事にある程度の分かりやすいかっこよさ・面白さ、というのは求めたいものです。

そのへんがまぁ医者の甘いところではあるんですが。

 

もちろん一見つまらないように見える仕事でも、面白さというのは見つけられますが、進路として選ぶかどうかと言われた時にやはりそういうのは弱いですよね。

 

コモディティ化がわかりやすく進んだ麻酔科からみていると、外科の偉い先生がなぜ外科医のなり手が少ないんだろうか?と言っているのをみると、ちょっと周回遅れな感は感じざるをえません。

 

僕が医者になったころにはまだいた、伝説的エピソードがたくさんある、いかにも外科医みたいなカッコいい先生は近頃本当に見なくなりました。

麻酔科だって、エントリーにも書きましたが、こんなカッコよくピンチを切り抜けられる麻酔科になりたい、と思わせるような場面はほとんどなくなりました。

そもそもピンチにならない。

 

おそらくですが、今一番セクシーな医者と思われているのは、アメリカに行って医者をやっているか、医者の仕事はほどほどで、不動産や株で儲けてTwitterでインフルエンサーになっているような人でしょう。冗談ではなく。

 

医者として満足な人生を送った大先輩方たちからすると、「医者」という仕事自体に魅力を感じてほしいと思うのは当然だと思います。

しかし若い人からすると、医者の仕事自体が昔とは見え方が変わっているから、なかなか響かない部分があるのではないでしょうか。

いろいろ言われても、「うっせえわ」としか感じないかもしれません。