ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

続・麻酔科の医者の給料はなぜいいのか

こんにちは、コッカーマリンです。

 

たまに自分でも思うんですが、病気を治すわけではない麻酔科の医者の給料がなぜいいのか、やはり不思議な部分もあります。

以前にもこんなエントリーを書いています。

 

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自分は麻酔科医なので、当然ウェルカムな状況なわけですが、一生懸命オペをやって術後も遅くまで帰らず管理をしている外科の先生たちをみていると、なんとなくしっくりこない時もあります。

 

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先日たまにいっているアルバイト先の病院で、麻酔科の先生たちが文句を言い合っていました。

予定手術は時間延長しまくるのに、その上「予定緊急」みたいなオペが枠外に大量に入って時間外の対応が大変だ、予定緊急を制限すべきだ、などの内容でした。

 

それを聞いていたらめっちゃあるあるだな、と思いました。僕がこれまで勤務していたどの病院でもあった問題です。

ある程度力のある部長がいたらオペを制限したりとかするわけですが、病院からのオペを増やせという圧力もあり、麻酔科の若手との間で板挟みになる、みたいな感じですよね。

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今の診療報酬体系の中では、オペを増やして手術料金と回転の良い入院患者で収益を上げる、もしくは運営コストをなるべく下げて地域ケア病棟のようなものを作って地道に稼ぐ、みたいなことをやらないと儲からないので、ある程度大きくて医者がたくさんいるような病院では自然とオペを増やせという圧力が生まれるわけです。

病院だって経営ですからね。

 

地域の中核病院かそれに近い規模の病院なら、いくらでもオペ適応の患者はやってきます。外科の先生ががんばって外来をやっているとそういう症例が集まってくるわけです。

 

外科医はオペをやるから外科医なわけで、もちろんオペ申込みをしますよね。

病院の経営にとってもウェルカムだし、自分のスキルアップや業績にもつながるわけだしそこに躊躇するファクターは何も無いわけです。

 

しかし当たり前ですが手術室という中央診療部門にも受け入れられるキャパシティが決まっているわけです。

オペ室ナースの数だったらオペ室の数だったり麻酔科医の数だったりで規定されてくることが多いと思います。

オペ室師長が怖いとか麻酔科がやたらディフェンシブな運営をしているとか、そういう質的なものにも影響されますが、いずれにしてもキャパシティというのは決まっている。

 

なので、オペをこの病院でやる、と一人の外科医が決める際に

「この病院のキャパシティ内で本当にこのオペをやるこのは可能なのか」

ということを確認しないと本当は駄目なわけですよね。

 

でもそんなこといちいち外科の先生はやりません、というかできません。

他の先生もオペ入れてたら、多少オペ予定時間をごまかしてでも間にねじ込んじゃおう、と思うのはしょうがないでしょう。

あと予定で入れるほどでもないけどやや緊急チックな症例は枠外で形だけ頭下げてなんとかお願いしよう、これまでもそうやってきたしなんとかなるんだろう、そういうのが実情ではないでしょうか。

 

外科医のオペやりたい数 ✕ 外科医の数 < オペ室のキャパシティ

がいつでも担保されていたらいいわけですけど、そんな病院あんまりないんですよね。

ぱっと見うまくいってそうな病院があっても、きっと何か裏があるはずです。

血ヘド吐いて頑張っている麻酔科の中堅が実はいるとか、税金から病院に補助金が入っているとか、そんなんです。

 

ちなみに外科医のオペやりたい数という表現はややおかしいですね、彼らもやりたいオペもありますが、別にやりたくないオペだってあるわけで、意志に関係なく降ってくる症例をしないといかん、というだけの面もありますから。そういう意味でも麻酔科医と本当はあんまり変わらないんです。

 

病院としては、売上のために

外科医のオペやりたい数 ✕ 外科医の数 < オペ室のキャパシティ

の左辺は減らしたくないので、右辺をとにかく増やしておこうとします。

オペ看を増やすのも結構たいへんです。看護師のなかではオペ看護師はどちらかというと人気の無い部門です。

でも看護師はどこでも結構看護部の上の人から命令されたらちゃんと異動することが多いので、大変ですがなんとかなることが多い。

 

なので最大の律速段階が麻酔科医の数ということになるわけですよね。

医者はやはり貴重なので、数を増やすのは大変です。

昔は地域の医局に頼んだら人を送ってくれたわけですが、いまや教授の意向でどこへでも動くまともな麻酔科医なんてほとんどいなくなっているので、給料を増やして来てもらうしかない、というわけです。

 

外科医のオペやりたい数 ✕ 外科医の数 < オペ室のキャパシティ

と書きましたが、もちろん左辺は日々変動があります。

最小時はこの不等号が成り立つ時もある。

しかし日本の医療が安すぎるという根本的なポイントがある限り、ほとんど左辺が右辺を上回ってしまうんですね。

なのでオペ室が本来のキャパシティ以上のパフォーマンスを強いられている現状があるのは間違いありません。

 

そういう状況がある限りは麻酔科医の給料が他の勤務医より高いという状態が続くのはしょうがないのではないか、と思う次第です。

 

ちなみに左辺が日々変動があるということは、それに合わせて右辺も変わればいいので、アルバイト麻酔科医というのは実はとても効率がいいんですよね。オペが多いときだけ来てもらって少ないときに頼まないので給料(コスト)発生しないわけですから。

 

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しかしフリー麻酔科医はなぜか麻酔科学会からは目の敵にされているわけですが。。

フリーでやってくる麻酔科医の質を麻酔科学会が担保してあげる、それが現状麻酔科学会が日本の医療にできる最大の貢献じゃないかと思ったりするんですが、実際は完全に逆にいっています。

 

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