こんにちは、ロスジェネ勤務医(@losgenedoctor)です。
麻酔科医、国会でやり玉にあがったり、
参議院予算委員会「令和5年度総予算」基本的質疑〜令和5年3月1日
— ねす (@kanaesth) March 2, 2023
話長いからまとめると、フリーランス麻酔科医ども、今から締め上げるから覚悟しとけや
by 自由民主党 島村大氏(歯科医師) pic.twitter.com/qu3xs5zjXq
SNSでも、機構専門医更新の要件があまりに麻酔科だけ不自然なルールであることで騒がれたり、とにかく変な方向で悪目立ちしている印象があります。
こういう流れになった理由ってなんなんだろう?と考えるに、やはりこれは認めなければいけませんが、麻酔科医の劣化というのはきっとあると思うんですよ。
劣化というか、麻酔診療自体の質の変化によって自然と求められるスキルも変化してきた結果なのですが、簡単に言うと、手術が低侵襲化して麻酔の薬や機器が良くなり、修羅場で何もできないような人が普段は問題なく麻酔科医として生きていけるようになった。
僕が医者になったころは、いわゆる「ゆるふわ」な人が喜んで入ってくるような業界ではありませんでした。
麻酔科医全体がそういうイメージで見られつつある中で、遅れてやってきたフリーランス麻酔科医の銭ゲバ話。
正確にいうとフリーランス麻酔科医が猛威を奮っていた時代と、麻酔がゆるふわになった時代というのは一致しないのですが、えてして情報は時間差で伝わってくるので、「ゆるふわ」な奴らが外科医や地方の医療機関の足元みて大儲けしている、というイメージになってしまった。
麻酔なんて、麻酔科医そもそも足りてないしゆるふわだし、看護師にやらせよう、という声があがるのは当然といえば当然かもしれません。
麻酔は全然本来ゆるふわではないし、生体の麻酔状態という現象から何かを学んだ医者が毎年一定数供給されることは医学全体にとって必要なことだ、と思っている僕としては忸怩たる思いがありますが、そんなことは麻酔科医にしか分かりません。
麻酔科医というのは医学界全体からすると圧倒的に少数派で、SNSでも少数派ですが、とにかく発言力がない。
大きな流れから逃れることはできないのでしょう。
よく考えてみると、フリーランス麻酔科医の存在によって、むしろ年単位で生きながらえた病院というのはたくさんあるはずです。
高い給料を払って麻酔科フリーランスを雇ってまでオペをやりたい、ということはつまり、そのお金を払っても全体としては儲かる、もしくは地域の医療システムに残り続けることができる、ということです。
例えば、麻酔科医がいないからという理由で、オペ症例があっても断ることを続けていたら、そのうちオペ症例が紹介さえされなくなり、そのうち外科医もやめていき、オペをする病院としては復活不可能になります。
しかし、「日本の麻酔科医」というひとまとめで見た場合、一部の麻酔科医がフリーランスで技術を切り売りして地方の潰れるべき病院を生きながらえさせた一方、麻酔科医の価値が毀損し、麻酔科医が麻酔科医として生きていける余命を減らしたということではないか?という気がしてなりません。
もちろん結果的にそういうふうに見えるだけで、麻酔科学会が麻酔科医それぞれの働き方を自由に決められるわけではない以上、どの道このようになったのだろう、という気がしないでもありませんが。
思えば、自分の少し上の世代ですごく流行ったフリーランスブームは凄かったです。一日麻酔したら100万円ゲット、なんて自慢話みたいなことをよく聞きました。
この世界、やり方によってはボロ儲けできるんだなぁ、と思った記憶がありますが、結局長いスパンでみると辻褄が合ってしまう。
そういうものなのですね。
フリーランスが暗躍していた時代に本当はやるべきだったかもしれない、麻酔科学会会員の働き方の制限、なぜか今やっている(週3回単一施設で勤務など)のも皮肉なものです。
これから麻酔科という診療科の働き方でどんな変化が実際に起きるのか、麻酔診療というものがどのように質を変化させていくのかは分かりませんが、すでに麻酔科医として何十年も中の人とやっている人間としてはなんとか生き残るしかありません。