ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

アフターコロナ時代に並列麻酔は合わない

こんにちは、コッカーマリン(@losgenedoctor)です。

 

「アフターコロナ」とか、「ウィズコロナ」とかいう言葉をよく聞くようになりました。

意味は読んで字の如しで、みなさん大体わかると思います。

 

並列麻酔って"アフターコロナ時代"にどうなるんだろう

とふと思いました。

 

一応説明しておくと、並列麻酔というのは2つ以上の手術室を一人の麻酔科医が行ったり来たりして同時に麻酔管理をすることです。

 

"ちゃんとした"麻酔科医の世界では基本的には「ダメなこと」となっていると思われます。一つの部屋みてるときはもう一つの部屋は誰も見ていないことになり、危ないですもんね。

知らん間に挿管チューブ抜けてたらどうするんだ?ということです。

 

しかしそれってあくまでもタテマエで、実際はやっている現場はたくさんあるんですよ。だって麻酔科医が無理してたくさん同時に麻酔すれば、オペがたくさん同時にできて全体としての時間効率よくなりますし。

麻酔科医も早く帰れますしね。

 

実際やってて危なくないのか?という純粋な疑問に対してどう答えるかですが、これって面と向かって人に聞かれたら相手によって答えを変えますね。

相手が同僚の麻酔科医なら「並列やっててこんな怖いことあってさー」って昔の話をしたりしますし、学会場で他の医局の麻酔科医と話す時ならちょっと気をつけますね(並列しています、とはあまり言わない)。

僕もアルバイト先とかでたまに並列麻酔やっていましたが、そのバイト先の外科医には「並列麻酔、問題ないですよ」って言うだろうし、常勤の大学病院の外科医には「並列麻酔なんて危ないからやりませんよ」って言います。

まぁそんなもんですよ。

 

正味すごく危ないか、と言われたら、実は別にそんなに危なくはないです。今は特にモニターやデバイスが良くなっていますので、なにか不測の事態(そもそも起きにくくなっている)がおきても対処できることがほとんどでしょう。

実際は並列麻酔で問題になるのは、麻酔管理ではなく外科医に対するケア(終わってから、麻酔をさますのを待ってもらわないといけないとか)が大事だったりします。

 

しかし並列麻酔をしていたことで起きた麻酔絡みの事故というのは厳然としてあるし、並列麻酔していて麻酔上のトラブルが起きたら正直言い訳しにくいでしょう。

例え並列していなくても起きていた事故だとしても

 

殆どの並列麻酔やっている麻酔科医は「自己責任で並列麻酔やっている」と言い張ると思いますが、まぁそれも変な話で、事故が起きて患者さんに何かあったら責任とるといっても患者さんは戻ってきませんからね。

ただし「並列麻酔していたから不幸な転機になった」という条件を純粋に満たす例って、多分あんまり無いだろうな、というのも麻酔をやっている者から感じる実感でもあります。

医療上のトラブルって、何が本当にまずかったのか?というの難しいんですよね。

 

どっちにしても並列麻酔をやっていいのかどうか、その議論をずっと避けてきたんですよね、この業界は。タブーというか。

ちなみに僕の並列麻酔に関する考えはこうです。

www.cokermarin.com

 

それはそうとして、はじめの命題「アフターコロナ時代に並列麻酔はどうなる?」ですが、みなさんはどう思われるでしょうか。

 

患者さんを全員新型コロナの潜在的なキャリアとみなす考え方からすると、麻酔科医が手術室をしょっちゅう行ったり来たりするの、まずいかもしれません。

オペ室1の患者が実は新型コロナウイルスに潜在的に感染していて、それを並列しているオペ室2の患者さんにうつしたらまずいわけです。

オペ室1で抜管したら患者が咳をして飛沫なりが飛び散り、そのままオペ室2の導入に走る、なんてのはこれまでやってきたことなんですが、アウトでしょう。

 

「飛沫に暴露されやすい、導入や抜管の時」だけゴーグルなりしっかりPPEをしていればOKということで運用したらいいんでしょうか。

しかし並列麻酔してると、本当にしょっちゅう行ったり来たりしないといけないですからね。

そのあたりの濃厚接触の基準ってどうなっていくんでしょうか。

 

麻酔看護師なり研修医を部屋において指導するという場合の並列麻酔(*別名:鵜飼麻酔)でも実は微妙ですよね。指導しながらみているだけ、といってもやはり麻酔科医は患者の頭元にいますから、抜管やチューブの接続を外したりする操作の時等に飛沫浴びやすいでしょう。

で、そのまま他の部屋に行く、と。

 

指導医はオペ室の中に入らずに外からリモートで指導する、ということもやれないことはなさそうです。

しかしオペ室に入らないと分からない変化や問題、あるいは部屋の雰囲気みたいなのもあるので個人的にはどうかな、とも思います。

 

「オペ室を行き来する場合のルール」とか作っている大きな病院ありそうですね。学会もなにか作るでしょうか。

感染が収まっていって、なんとなく適当になっていて、知らない間に元通り、ってなって行く気もしますけどね。

 

並列麻酔はアフターコロナ時代にそぐわない、ということはとりあえず言えそうです。