こんにちは、コッカーマリン(@losgenedoctor)です。
麻酔看護師の話題が日本経済新聞にのっていました。
これに関して思ったことを、Twitterでつらつらと書いたのでそれを並べてみたいと思います(一部改変)。
とても良く書けた記事だと思いました。これを読んだら、他科の医師も含め相当多くの人が「これはいいんじゃないか?」と感じるんじゃないでしょうか。日経新聞でこれだけしっかりした記事、麻酔科医の仕事の一部が麻酔看護師なるものに移行する流れはもう既定路線といっていいんでしょうね。
「麻酔科医が本当に医師しかできない業務に専念できる」
「より患者の不安軽減につながる」
「医師の"指示の下にいろいろなことができる」
これらの表現、よく見ますが僕なんかは実に上手い書き方だなぁと思ってしまいます。
「麻酔科医が本当に医師しかできない業務に専念できる」
本当に医師しかできない業務ってなんなんですか?そんなものは実は曖昧で、すべての業務に「これは医師の仕事・これは看護師の仕事」と分けてくれる人がいるわけではないのです。医師のレベルも人によってぜんぜん違う。
「より患者の不安軽減につながる」
記事に出てきていたような一流病院でそんな風にがっちりやれば、麻酔科医と看護師が時間をかけてみてくれるんだろうから、麻酔科医が一回だけ話すよりは不安軽減するなんて当たり前でしょう。実際にそのへんの病院に導入されたら、きっと術前診察すらしない看護師だらけになるんじゃないか、と僕は予想します。どこかで「麻酔科の先生がみてるだろうしね。責任取るのも麻酔科の先生だし」と思わないと言い切れるでしょうか。
「医師の"指示の下にいろいろなことができる」
「医師の指示の下にやりました」でいいんなら、拡大解釈されてそれこそ看護師になんでもやらせていくであろうことは確実だと思われます。
記事に出てきた麻酔看護師推進大学・施設の麻酔科(昔からこの人達ばかり出てきます)と、麻酔看護師を増やして麻酔を看護師の仕事にしてしまいたい勢力がタッグを組み、そういう所でしか使えない資金力で麻酔看護師の運用を自分たちで始めて、これはいいものだという既成事実を作ってしまう。
個人的にはその辺りのことが麻酔で飯を食っている麻酔科医全体のコンセンサスを全く得ないまま進んでいっているのがとても気に入らないですね。麻酔科医でも、麻酔看護師が実はいる場所には結構たくさんいて、普通にほぼ一人で全身麻酔をかけている、ということ知らない人多いでしょう。
麻酔看護師の話になると"オレはデキる医者、生き残れる医者だ脳"の人が「できない麻酔科医が排除されて嬉しいわ」みたいなことを絶対いい始めるんですよね。昨日ツイートしたタクシー業界と違い、多くの医者は頭お花畑なので、こういう時足を引っ張り合うわけです。
僕も本当はね、麻酔看護師を導入し、麻酔科医の仕事を新しい時代に合ったように変質させていくべきだと思いますよ。合わせて中小の病院をどんどん合併させて集約化・効率化、これがあるべき姿でしょう。
しかし時代が変わってもいつまでも変われない麻酔科医業界全体が実は社会からNOを突きつけられていて、強い力によって(大げさに言うと)社会から排除されかかっているんだ、ということに多くの麻酔科医の仲間たちが気付いていないように見えるのが歯がゆいです。なぜ麻酔科医たちは反対の声をあげないのか。多分お医者さんたちは誇り高いので、看護師に仕事奪われてなるものか!と自分が今の仕事にしがみついているのを認めたくないというのはある気はします。
自分は賢くて偉くて価値のあることをどんな時代になっても提供できる、そう思っちゃってるのかもしれない。
僕なんて堂々と自分は大したことしてない、と断言してますので、いくらでも卑屈になれます。1000回麻酔して自分がやったら一人くらい危機から救えるかもしれないけど、そんなことは社会的評価、実は無価値ですよ。
なので僕は以前から、これからは麻酔科なんて研修医は選ばないほうがいいよ、と言い続けてるんですよ。頑張って医者になって、看護師さんと仕事の取り合いしたいですか?
同じようなことをやっているように見えて、実は違うんだというのは詭弁だと思っていうます。頭の中で考えている内容のレベルが全然違っても、現代医療レベルの臨床で実際にでてくる結果にそこまで大きな違いがあるとは思えない。研究なら違いがあるかもしれませんが。
以上です。
麻酔看護師の話、個人的にはずっとウォッチしているので、どんどんウイルスみたいに水面下で広がっているように感じます。
Twitterでのやりとりでもありましたが、麻酔科医が充足している地域とそうでない地域、ICUやペインクリニックメインの麻酔科医と手術室メインの麻酔科医で問題の捉え方がぜんぜん違うので結構難しい話題でもあります。
この記事を読んでどう感じるかは、本当に人それぞれだということでしょうね。