こんにちは、コッカーマリンです。
病院はいろいろな職種で運営されています。
病院幹部、事務、看護師、医者、契約業者、などなど。
収入は患者さんからの自己負担金と審査支払機関からの支払いが主です。
ちゃんと保険で審査の通る治療をして、患者さんが多ければ儲かるわけです。
支出はいろいろありますが、医療機関にとって一番重要なものは「人件費」です。
経営者からみたら、患者を増やして人件費を減らすのが一番てっとり早いわけですが、もちろんそう簡単ではありません。
患者を増やすために近所の診療所をまわったり、救急車をがんばってとったり涙ぐましい努力をするわけです。病院がキレイだったりするとそれも集客に影響します。
老人病院みたいなので、終の棲家としてお年寄り引き取ります、みたいな「病院」もありますが。
麻酔科医からみて興味のある"オペをやる"ような病院にとって、集客をあげるためには「いい病院」という評判を得ることが重要です。
いつでもすぐオペやってくれるとか、病室がキレイだとか、駐車場が広くて停めやすいとかそんなことでしょう。
あとは「いい先生」がいることが大事なわけです。
医療職でない人に聞くと、「あそこの病院は国立大学出身の先生が来てるけど、こっちの病院は先生みんな私立医大出からやからあんまり良くないでとか「あの先生テレビにも出たことある有名な先生やねんで」とかいうわけです。
もちろん外来で物腰やわらかくイケメンだったりするとそれだけで集客ドクターになれることもある。
どこでもやってるような、でもちょっと新しい治療法を仰々しくHPで「うちはこんなことに力を入れています!」感じで宣伝していたりすると結構みんなみています。謎の"その分野の専門の外国人医師"なんてのが指導のために来ました、なんて情報載ってたりすると完璧。
とにかくそういう「いい先生」というのは経営者としてはとても欲しい。
そのいい先生が「大学病院からの医局人事」できていて、代々そのポジションの人に支払ってきた給料で、文句言わず当直までしてくれたりしたら超優良コスパ人材です。
医者からすると、自分の評判がいいことは分かるでしょうし、承認欲求がみたされます。「先生に診てもらいたくて遠くから来ました」みたいなこと言われたらしんどくても頑張れるものです。同じ外来していても自分の方は患者いっぱい、同僚の先生はガラガラだったりすると、しんどい反面「俺は優秀な医者なんだ」と思える面があるはずです。若い先生からも「○○先生みたいになりたい」なんて思われてるわけです。
経営者からの評価が高いことも嬉しいでしょう。
そういう高い評判と評価は自分にとっても財産です。
開業してもいいし、そういうちゃんとした先生は次にちゃんとした病院に行ける可能性も高い。
経営者からみれば、「客を呼んでこない」麻酔科医は単なるコストでしょう。
電気代とか、外注のリネン業者みたいなものです。
だから必死で厚生省とか麻酔科学会に文句いって「コスト」を下げようとしてるんですね。
スジの悪いことに麻酔科の偉い先生たちもそれを認めてしまってるわけですが。
外科医からみたら多少は「いい麻酔科の先生」というカテゴリーはあるにしてもあまりにひどくなければ、経営的にみれば麻酔科医なんて全部同じなんです。
文句言わず安い給料で働いてくれる人がいいわけです。
すごく大きな施設だと、麻酔科医の存在が危機管理的な意味でボディブローのように効いてきて結構重要なわけですが、ほとんどが「手術麻酔をまわす」程度のことしか期待されていないというのが現状だと思います。
経営側からみると医者といってもインカムを増やしてくれるハイパフォーマンスな医者と、単なるコストにしか見えない医者がいるんですね。
鎮痛とか、PONVとか、ほとんどどうでもいいんですよ。
「麻酔科医は病院の要である」
と先輩麻酔科医から言われ、それを誇りに思っていましたが、自分のアタマで考えてみみたら
「麻酔科医は単なるコスト」
であるということに気付いてしまいました。
医者じゃない人からみたら分からないかもしれないが、実は超凄いんだぞ麻酔科医って!
というのは真実かもしれません。
しかし必死で麻酔科医の「コスト」を下げようとしてる医療業界をみていて、もう一つの真実がみえてきてしまいました。
医者としての麻酔科的な視点というのは他の医者にはない独特のものがあり、個人的には面白い仕事だなぁと今でも思っていますが、資本主義社会で生きる一人の社会人として、「コスト」としてしか計上されない仕事って結構悲しいな、とも思います。