こんにちは、コッカーマリン(@losgenedoctor)です。
新型コロナの感染拡大に伴い、医療現場ではいろいろな変化が起きています。
麻酔科がらみでいうと、とりあえず予定手術が減っていて暇になっている人と、ICUに駆り出されて忙しくなっている人とか、発熱外来をやらされている人まで、いろいろいると思います。
自分の施設が感染症の指定病院や大学病院かどうか、ICUをみている麻酔科に属しているのかどうか、ICTがらみの仕事をもともとやっていたのかどうか等、それぞれの普段の仕事に応じて違っていると思います。
ちなみに僕は予定手術が減っていて、暇になっている方です。コロナ絡みの業務は一時的にやっていたことはありますが、今はむしろ落ち着いていてあまり携わっていません。
アフターコロナに麻酔科は今後どうなっていくんだろう、というのを考えることがあります。
手術が減っている状態はいつまで続くのでしょうか。
例えば人工関節の手術や脊椎の手術などが特に不急の手術ということでやり玉にあがっていて特に制限の対象になっています。
ずっと今くらい減っていることはないでしょうが、例えば一年後に元通りまで回復しているのかといえば、わかりませんよね。
これだけ「院内感染」のことが報道されたら、患者さんもそんな危ないところに何週間も入院したくないと思うかもしれません。オペ自体の絶対数が元に戻らないかもしれない。
そういう治療で採算をとっている病院は、なんと言われようが「うちはコロナを徹底的に院内に入れない方法をとっています!」とか宣伝する必要があるんでしょうかね。
がんの手術は長い目で見るともとに戻ることは予想できます。手術しないとコロナでなくても死んでしまうわけなので。
ただ、放射線治療を選ぶ人が一時的に増えるなど、そういう変化はありそうです。
ただし基本的には手術医療というのは、医療の中でも「やらないといけない」ものの比率は高い方なので、アフターコロナに手術がすごく減るということは考えにくんですよね。
ということは「麻酔をかけること」の需要自体がコロナで長期的に減るとは思えない。
働き方は変わるかもしれません。
このコロナとの戦いが長期化する場合。行政が感染者を定点観測して、増加傾向があったら一ヶ月間の自粛要請が出る、みたいなことが何年か続くとします。
フリーランスとか大学からのアルバイトが麻酔科のメインの戦力だったような病院は、コロナの感染者数が増加する兆しのあるたびに手術が止まる、なんてことが起きていたらやっていけないです。
なので基本的には雇用を外勤で回す、という業態には逆風がずっと吹くことになると思います。
フリーランスが常勤麻酔科医に戻る動きはどんどん加速しそうです。
また、大学の医局員のバイト先を確保するために、民間病院の麻酔科医が行っていたバイト先を大学が奪う、というような流れも生まれそうです。
あとは当然バイト代の値崩れ、ありそうですね。
そんな中期的な話でなくて、さしあたって経営破綻するしかない病院は結構でると思います。政府の助けがとりあえずないと一年も持たない病院はたくさんあります。
オペをかろうじてやっていたような施設で、もうこれを契機に急性期から完全に手を引いて療養型だけやる、というふうに方針転換するところもあるでしょう。
リストラされる事務職員や医者も相当な数でると予想します。
さすがに国も時間を与えるために助け舟を出そうとすると思いますが、基本的には以前から厚生省というか政府は病院の数を減らす姿勢なので、コロナを契機に潰す病院は潰すということをやるでしょうね。
客観的にみても今回のコロナで分かったのは、日本は病院の数と病床数は多いんですが機動的に動ける部分がすごく少ないんですよね。
日本には小さな病院がたくさんあって、それぞれが経営のために多少ずるいやり方で運営しています。大して頑張って働かなくても国の通達をうまく解釈して運用すれば儲かるやり方がある。医療者も、テレビで見る「大変な医療現場で身を粉にして働く医療者」ばかりではありません。
病院の経営者がそういう頭でしか医療に向かっていない。なのでコロナみたいなのがあったときに日本全体でICUなり感染症病床を増やさないといけないとなって自治体が各病院に要請しても、まぁ腰はすごく重いですよね。コロナなんてみても儲からないし普通の患者減るし医療スタッフからも不満出るしいいことないですから。
民間病院もそうですが、小さい公立の病院なんてのもほとんどんそんな感じです。
国からしたらそういう中小の病院がたくさんあって医療費を食って、国難みたいなときにも全然使えない、となったらもう全部潰してすごく大きな施設にまとめ、国が決めた通りに動いてくれたほうがいいな、と考えるのは自然です。
そういう意味でも小さめの施設でのほほんとやっていたような麻酔科医は、いろいろと覚悟を決めないといけない事態がおきそうです。
まぁまさに今の自分もそうなんですけどね。
パートタイムのいわゆるママさん女医はどうなるのでしょうか。これはちょっと僕には分かりませんが、とりあえず今回のようなピンチのときに彼らがどんなことをやってくれるのか、それはすごく見られていると思います。
ちゃんと言われた仕事を文句を言わず淡々とやるのか、コロナを診たくないがためにいろいろ逃げ回ったりいちゃもんをつけたりするのか、そのあたりですね。
麻酔看護師の話はとりあえず遠ざかるかもしれません。
そもそも麻酔看護師の話が出てきた理由の一つは、麻酔診療のコモディティ化で麻酔なんて医者がやらなくてもいいのではないか?という意見があったと思うんですね。
しかし今回コロナ対策で麻酔のやり方もかなり変わらざるを得ないし、麻酔が「大層なこと」として現場で受け止められることが増えると思います。
挿管抜管でいちいち防護服着て飛沫拡散防止策をとって...というのをみていたら、これやっぱ麻酔科の医者じゃないとダメだよな、と感じられるのではないでしょうか。
すごく本質的なことではないし、ちょっとしたことだと思うのですが、実際にはこういう現場の認識というのがすごく重要なのではないか、と思うんですね。
とにかく今後何年かは麻酔科学会の演題もコロナがらみのことばかりになるでしょう。
そのあたりのとりあえずの結論というか、定番のやり方みたいなのが出来上がるまではまださしあたっての麻酔科学の役割は続くのかな、と思っています。