こんにちは、ロスジェネ勤務医(@losgenedoctor)です。
Long-COVIDという、いわゆる「コロナ後遺症」と呼ばれる症状があります。
いろいろなメカニズムが考えられています。↓
なかなか怖くなってくる。
・COVID-19患者の脳剖検で脳幹の損傷が見られる
— ロスジェネ勤務医 (@losgenedoctor) September 23, 2021
・Long-COVIDの症状と脳幹機能障害がよく合う
・脳幹の橋と延髄でのACE2の発現が最も高い
Long-COVIDは、ウイルスそのものまたはその後のサイトカイン血症による脳幹機能障害が慢性的に残存することで起きている?https://t.co/hNOLsIGmCg pic.twitter.com/TrQP6dT4Pm
一定数症状が残るような人いるんだなぁ、怖いなぁとなんとなく思っていました。
実際に親戚の知り合いの人で、コロナに感染したあとずっと日常生活に支障がでるほど疲れやすい、という人もいて、実際にあるんだという印象でした。
しかし、先日こんな論文を目にしました。
コロナ感染を検査で調べて分かった群より、検査はせずに自分で”感染したと信じている”群の方が、LongCOVIDの症状を訴えやすいという結果。「コロナ後遺症」の危険性を訴えすぎるせいで、体調不良の後にそんな自覚症状が出てくる人がかなりいるんじゃないでしょうか。https://t.co/Ce5cDhrHar
— ロスジェネ勤務医 (@losgenedoctor) January 12, 2022
分かりやすく説明すると、自己申告による(検査をしていなくて、でも自分はコロナに感染したと思っている)COVID-19の感染者は、Long-COVIDの各種症状を有意に訴えるが、実際に検査で陽性になった人がLong-COVIDの症状を訴えることはそれほどでもない、という結果です。
論文では、COVID-19感染後の持続的な身体症状を自動的に新型コロナに帰すべきではない、と言っています。
確かに、もしコロナに感染したと思い込んで、なんだかずっと調子が悪くて、でもLong-COVIDのせいだと本人も医者も思いこんで、実は悪性腫瘍がありました、というケースなんて出てきそうです。
コロナ後遺症って、不定愁訴みたいなのが多いので、「世間でそう言われているし、体調崩してからずっと調子悪いし、もしかしてコロナ後遺症かも...」って思い込んだら、実際にそういう症状が出る人は一定数いるんじゃないかと個人的には思います。
LongCovidの症状だと言われているものって不定愁訴みたいなものが多いので、例えば疲れやすい気がすると自分で思えば、実際にそんな症状を自覚するようになるものなんじゃないかと、医療者ならちょっと思ったことはあると思います。
— ロスジェネ勤務医 (@losgenedoctor) January 12, 2022
それこそInfodemicの問題で、まだ確定していないようなことがやたらとSNSやメディアで流布されることで、むしろそっちの方が問題を引き起こすということがあるんじゃないでしょうか。
実際にはそんなにないから、むしろふわっとそういう話だけ広がりやすいという面もありそうです。
コロナは怖い怖い、感染対策みなさんもっと頑張りましょう、というのを強調するためにlong-COVIDの話も取り上げられることが多かった気もしますが、ほとんどの「コロナに感染しない人たち」に向けてそんなおどろおどろしい話を振りまくことで、むしろメンタルからの体調不良を誘導させる可能性については、ちょっと考えるべきだったと思います。
コロナの危険性を訴える時に、LongCovidの存在を強調する声があるけど、そのせいでむしろ長く苦しむ人が出る可能性も大いにあって、医者が医者だと明らかにした上で何かを発信するのは、内容について相当慎重になるべきなんじゃないでしょうか。
— ロスジェネ勤務医 (@losgenedoctor) January 12, 2022
なんだか、コロナの始めの頃の、PCR検査を無症状の人にもどんどんやることの弊害(事前確率が低い群にたくさん検査をして、偽陽性者で混乱を助長する云々の話)の議論と似ているな、と思いました。
何も問題がない人に、いらぬ介入を加えることでむしろ大きな問題が起きるということです。
面白いのは、PCR検査拡大に反対していた人たちがむしろlong-COVIDの話をよくしていたな、、ということなんですよね。