ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

専門家会議廃止、分科会へ移行の話で感じたこと

こんにちは、コッカーマリン(@losgenedoctor)です。

 

toyokeizai.net

6/24、西村大臣が新型コロナウイルス専門家会議を廃止して、今後は有識者会議の下部組織としての「分科会」に移行することになりました。

 

専門家会議のメンバーに前もって伝えずに「廃止」を発表した、有識者会議に山中伸弥先生という感染症に関しては門外漢の人物をもってきたことなどでいろいろと批判もありますが、僕は多分これは本質的には悪者は誰もいない話なんじゃないかと思うんですよね。

やり方が悪い人はいますけど。

 

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そもそもいくら命に関わるウイルス蔓延対策の話であっても、例えば緊急事態宣言を出すにも法律の根拠が必要であり、決定において重要な立場である「専門家会議」の法的根拠が曖昧だと良くないわけです。

なので今回ちょっと落ち着いている間に「再編」というのは十分ありだったのではないでしょうか。

 

しかし日本の新型コロナ対策は結果としてうまくいっていたと思うんですよ。なのになぜ今組織の再編なんてやろうとしたのか。

きっと理由があるはずです。

 

日本の新型コロナウイルス対策は世界的にみるとちょっとオリジナリティがあって、「クラスター対策」というのをやっていました。

それには日本の「保健所」というインフラが十分に機能しているという前提が重要でした。

 

ここからは僕の推察なんですが、今までのやり方がずっと上手くいくのかわからないという話です。

新型コロナが「とても怖い病気」って多くの人が思っていたときは自分がコロナにかかったらいやだ、怖い、って感じていたと思うんですよね。

なので検査を求めたし、保健所に聞かれてもどこどこに行ったとみんな正直に話す。

 

しかし新型コロナにみんながだんだん慣れてきて、ほっといたらほとんど問題なく治ると分かってきた。特に若い人。

むしろ新型コロナと判明したら仕事を失ったり、収入が減ったり、家族が学校や社会で差別的扱いを受けるというほうがデメリットなのでは?って感じ始めても不思議ではない。

なのであやしいな、と思ってもみんな検査に行かなくなったり、陽性と判明しても自分の行動を保健所に言わなくなってきて、「経路不明」の感染者がどんどん多くなる傾向にあります。

すなわち、今後は以前ほどクラスター対策が十分できなくなる可能性がある。

 

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日本独自のクラスター対策が、社会のこういう変容によって機能しなくなったらどうなるでしょうか。

欧州やアメリカのように、とまでいかなくても、西浦先生を始めとする今回の戦略を提案した先生たちが責められる可能性があります。

そもそも、これだけオリジナリティのあるやり方ですから、長期的にみて本当に正しいことをやっているのかどうか、しっかり検証する必要があります。

それこそ科学的態度だと思います。

「日本独自のクラスター対策が素晴らしい」ということが変な信仰になったらまずいのです。

 

責任問題については「中の人」でかなり共有されていた問題点なのではないでしょうか。ネットで見る記事でもすこし漏れ出てきていたこともありました。

www.bloomberg.co.jp

 

繰り返しますが、もし第二波(第三波?)が大きな被害を出す事態になったとき、大きな成果を上げた押谷先生や西浦先生始めとする先生方に責任を押し付けるような流れにならないように、という考えはきっとあったはずです。

 

僕は結構ツイッターでは「日本のコロナウイルス対策は本当にみんなが礼賛する専門家の対策が良かったからうまくいったのか?」と疑問を呈することがありますが、それはまだ結論が出ていないのに勝手にヒーロー認定して祀り上げるような空気を問題だと思うからです。

これだけ何もわかっていない災厄に対して、短期的にうまくいったと評価したり、特定の人物を神格化するようなことがあってはならない。

これは絶対といっていいですが、彼らだって失敗した点はきっとあるはずです。

 

役人とか政治家の側の「やはり責任を持った決定は自分たちがしないといけない」という矜持もきっとあったと思うんですよ。

国民の命を守りたい、という気持ちは厚生省の医系技官の方々もすごく持っているのだと思います。

新型コロナの蔓延と社会の混乱を防いだ、彼らのファインプレーもたくさんあったように思われます。

 

しかし、その中で確実に高く評価されてしかるべき、という点は、押谷先生や西浦先生、尾身先生もそうですが、しっかりと前面に出てきてくれた、ということです。

尾身先生を始めとして、素人がみても明らかに重みのある実績の先生が具体的な数字を上げてわかりやすく国民に説明してくれる。そしてしっかりと危機感を伝えてくれる。

これが国民の行動変容に与えた影響はすごくて、対策そのものよりむしろこっちが日本のコロナウイルス感染の広がりに与えた影響が大きかったんじゃないかと思うんですよね。

前面に出てくれたことでいろいろとむしろ責任問題などが起こったのは皮肉な話だと思いますが。。

 

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そもそも火中の栗を拾う勇気もすごいと思いました。

全然儲からない仕事だろうと思いますし、変な役人とも顔を合わせないといけないだろうし、しょうもない集まりたくさん呼ばれるんだと思うんです。

これはもう、多分「使命感」からやっておられるんですよね。

いくら批判されても俺たちが日本人の命を救うんだ、という。

 

底辺ドロッポ医の僕からしたら、もう想像しただけで(もし能力があっても)自分には無理だなぁ..と一瞬で思う話です。

今回新たに有識者会議に入った山中伸弥教授も、いろいろと批判はありますが、あれだけの人物ですから何か大きな考えがあって敢えて引き受けたのだと思います。

 

新型コロナ、第二波以降はよりオールジャパンでいこう、という政治決断があったということでしょう。

あれだけのメンバーですから、つまらない軋轢なんて生まれないと思います。

僕も( 底辺から)しっかり見届けたいと思います。