ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

検査やりすぎ批判をやりすぎな件について

こんにちは、コッカーマリンです。

 

コロナウィルスの検査の話です。

SBGの孫正義さんがこんなツイートをして秒の速さで炎上していましたね。

 

医者のフォロワーが多いアカウントは「基本的にコロナの不用意な検査駄目」という意見が当然多いので、医クラみんなから総攻撃されていましたね。

 

孫さんがお金だして不安な人に全部コロナの検査をして、軽症の人まで陽性がでて病院に入院しに来たら医療崩壊が起きて大変なことになります

本当に医療資源を向けないといけない人に医療が十分提供できない事態に陥ってしまうようなことなので、これは明らかに間違ったやり方だったと思います。

孫さんもすぐに引っ込めていました。

 

しかし最近のツイッター世論があまりに「コロナは検査いらない」に傾きすぎていてちょっと疑問を感じています。

 

 検査をやると医療崩壊が起きる、その理屈は一部分かるんですが実際にそうなんでしょうか。

思考停止していないでしょうか。

 

 

 イタリアが医療崩壊したのは検査をたくさんしたからだ、という意見が大勢を占めているようにみえるんですが、実際そうなのでしょうか。

人口あたりの病床数がイタリアは日本の1/4ですし、ICUのベッドに関しても1/3しかない。(下図)

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単に感染者というか発症者がイタリアで多かった、それが医療のキャパシティを越えてしまった。

それが実情だと僕は思います。

なので当たり前ですが、検査をしないではなくて感染者を増やさないことが一義的には最も優先されるべきだと思います。

 

そもそも北イタリアの繊維産業に従事している中国人が多くいて、感染が爆発しやすい素地があったこと、医療がそもそも貧弱だったこと、それがイタリアで感染が爆発したことの理由ではないかと思うんですが、どうなんでしょう。

この新しい感染症に対して、変に楽観的だった国民性もあるかもしれません。

 

 

コロナに本当に感染しているかもしれない、となったとき人間どういう行動を取るか。実際にみていると検査から逃げようとする人が多いです。

社会生活を送っていて、軽症で動ける人です。

そういう人の何%かは、そんなに咳をしていなくても人にうつす能力があると推定されます。

 

いまコロナはほぼ「穢れ」扱いになっていて、確定したら普通の生活が送れなくなります。軽症でも入院勧告がなされますし、そのまま入院というケースが多いでしょう。

 

というのが分かっている一部の人は検査から逃げ回るんです。

病院も保健所も検査をいやがるインセンティブが十分にありますし、検査が適切になされていない状態が続いていると思われます。

 

咳してて調子悪そうでも仕事とかに来ちゃうんですね。

体温の報告なんてあるけど、あんなの大体自己申告だから分からないですよ。

サーモグラフィーおけるお金のある会社ってそんなにあるとは思えない。

とにかくそういう人がいる限り、感染の広がりをおさえることは難しいのではないでしょうか。

 

 

もうコロナに感染することは「当たり前のこと」として受け入れないといけない段階に来ています。

勘違いしてほしくないのは、だから諦めましょう、ということではありません。

みんながなるべく感染しないようにしないといけないです。

医療崩壊を防ぐ意味もあるし、ワクチンがそのうち開発されるかもしれないので、どうせかかるならそれ以降の方がいいに決まっています。

 

しかし、誰しもコロナにかかる可能性がある、ということを口だけでなくて真剣に理解しないといけない。

なので「コロナ感染者」を意識の中で特別扱いしてはいけない。

これは感染者を広げない、という意味でもとても大事なことだと思います。

 

 

今人類はコロナウィルスという敵と戦っているわけです。

"敵を知り己を知れば百戦殆うからず" といいますが、戦うにはまず「敵を知る」必要があります。

世界中のラボでコロナウィルスの特徴がどんどん暴かれていっています。

現代のヒト側の戦士である研究者たちが、人類の未曾有の敵を攻略しはじめているのです。

 

そういう基礎医学な研究だけでなく、日本ではどのようなタイプのコロナウィルス(遺伝子の微妙な変化がおきていっているかもしれない)が、どのように広がっているのか、どのような人が日本の場合高リスクなのかというような研究をすすめていかなければなりません。

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医者なら、本来病気という敵を倒そうとする気概を持ち合わせていないといけません。

検査をしない、ということは永遠に敵がよく分からないということです。

検査は駄目だということは、暗闇から攻撃してくる敵から逃げ回っているだけなのです。

 

現状の最適解が検査をむやみにやらない、それはもちろん分かります。

しかし、そういう考え方が医者として「正しい」のだと勘違いしないようにしなくてはいけないと思います。