ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

個人投資家が個別株で損をする大きな理由

こんにちは、ロスジェネ勤務医(@losgenedoctor)です。

 

よく個人投資家の90%は負けているとか言われますが、その理由はいろいろと言われています。

ちゃんと銘柄分析できていない、人から聞きかじった銘柄を買っちゃう、損切りが遅い、などなど。

 

全部そのとおりだと思うんですが、僕はこの理由が一番大きいと思っています。

「個人投資家のメンタルと口座情報を読んで計算しつくされた、大手機関による相場の振り回し」です。

 

まず、個人投資家による売買の60%が信用取引と言われています。

信用取引って、簡単に言うと証券会社からお金を借りて株を売買することです。1株1万円の株を100株買って10%上がると思うのなら、10万円儲かる皮算用ができますが、絶対上がると確信するのなら、200万円を証券会社から借りて、合計300株買って30万円儲けることができます。

 

個人投資家ってみんなお金がないので、そういうことをしてるんですね。このブログの読者の方は信用取引なんてしたことない人が多いと思いますが、個人による短期取引の分量でいうと、実は信用取引の方がメジャーです。

で、大手機関は、個人投資家の信用取引口座が今どのような状況なのか、いつも把握しています。一部は公表もされています。

nikkei225jp.com

 

100万円の元手で、300万円運用しているとします。20%運良く益を上げて、60万円増やし、元手が160万円に増えたとします。

すると次は480万円まで取引できるようになります(どの証券会社もそういうルールです)。

そこで20%逆に下がったら、96万円マイナスで、元手が64万円まで減ることになり、36%のマイナスで、大抵の人はそこで退場です。

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つまり、信用取引というのは、3倍儲かるかわりに、3倍損をするのです。普通の人間は、そんな大きな変動にメンタルが対応できません。さっきの話でいうと、もう1ヶ月待ったら、20%また上がって取り戻せたかもしれないのに、ほとんどの人はその損失に精神的に耐えることができないのです。

 

これこそ、個人投資家が市場で勝てない理由です。もしメンタルが耐えられても、損失が大きくなりすぎて個人投資家が証券会社に借りたお金を返せなくならないように、「追証」や強制決済(強制的に売らされる)という仕組みもあり、要するに個人が銘柄自体の評価など関係なく全部売ってしまう状況というのがあるんですね。

 

そういう状況は実は個別銘柄なら簡単に作り出すことができます

個人投資家は大抵銘柄が上がると思って、借金をして信用で買っているんですが、大手機関はそこに空売りをぶつけてくるわけです。

 

「空売り」って、初心者には意味が少し分かりにくいんですが、ずっとホールドされていて売買する気のない株を誰かから大量に借りてきて、市場で売るんですね。大量に売って、個人が信用で買っている以上に売りまくれば、株価は下がる。個人投資家なんて、信用で買っているといっても大してお金ないので、簡単に負けてしまいます。

 

株価が下がったところで、買い戻します。で、もともとの持ち主に返します。株価がまた上がるはずです。これが空売りです。

ここでポイントは、個人投資家たちは、本来なら別に売らずにそのまま持っていたらいいんですよね。損しないはず。でも、先程書いたような理由で、つまりメンタルがもたなくて売っちゃうとか追証で売っちゃうとか、要するにそんなふうに投げ売りするので、大手機関が空売りした以上に株価が下がってしまうのです(その場合機関投資家は、安くで買い戻しできるので、より儲かる)。

 

信用買いしない個人投資家でも、なぜか個人投資家に人気の銘柄って決まっていて、大抵信用買いがたくさんされている銘柄です。

なぜ個人投資家に人気の銘柄が決まっているのかは、みんな聞いたことのある企業を買いがちとか、話題になった株にみんな飛びつきがちとか、いろいろ理由はあると思います。

Twitterとか株雑誌なんかで紹介された銘柄が人気出やすいとか、そういうのもありそうです。業績がどうみても良くて、株価がそれにしては上がっていない、という場合なんかもあります。なんか上がりやすそうじゃないですか。

で、そういう銘柄は大抵信用買い残が多くて、変な売り崩しにあいやすいので、信用買いしていない投資家にも影響してきます。

 

買い残のたまっている、業績優良企業の株が、先程のようにどかんと下がらず、ジワジワ下がることもあります。もうそろそろ上がる頃だろう、業績はいいんだし、ということでみんなどんどん下がり続けているのに買い増しするんですね。ナンピン買いというやつです。

でも何日も上がらない。苦しい。メンタルがみんなやられてくる。早く逃げたい。

 

で、たまに何かのちょっとした材料がでて、5%くらい上がったとします。すると、売り逃げたかった人たちがここぞとばかりに売るんですね。戻り売り、というやつです。そしてまた下落トレンドに逆戻りです。

そういう理由でも、信用買いの多い、個人投資家に人気のある銘柄というのは、リスクが高いのです。

 

決算というのは、3ヶ月に一回しかないし、大きな材料というのもそんなにしょっちゅう出るものでもありません。株価ってそもそもそんなに変動するの、オカシイんですよね

でもそれでは証券会社も、大口機関と儲からない。

で、これまで述べたような、「市場の振り回し」をすることで個人投資家のメンタルをいじめ抜き、投げ売りさせることで儲けているわけです。

個人投資家が損をすることが多い、というか、個人投資家の損失で株式市場はメシを食っている、と言っても良いかもしれません。

ゴールドマン・サックスにしてもクレディ・スイスにしても野村證券にしても、年単位でみると、損を出していることなんてほとんどないですからね。

 

なので、前回のエントリーでもしつこく書いた、「③信用買い残の推移」というのは、超重要なんですね。

 

www.cokermarin.com

 

これ、チャート読むより、ファンダを理解するより重要かもしれません。

特にコロナ以降、市場に個人投資家が増えたので、そういう市場の謎の振り回し、というのが目に付きます。爆弾をしかけられているようなものです。

もちろん信用買いがたまっていくけど株価はどんどん上がる、ということもあるので、その場合は乗らなくてはいけません。逆に信用売りが大量にたまっている銘柄を買っていたら儲かるのか?というと、そうではありません。

ただ、今日のエントリーに書いたようなしくみで市場が動いているのだということを知らないと、個別株で短期的なリターンを得るのは難しいかもしれません。