こんにちは、ロスジェネ勤務医です。
この2つのブログ及びVoicyを聞いて、考えたことがあります。
ラス先生のブログ↓
moneygairai.com ちきりんさんのVoicy↓
ラス先生のエントリーでは、
名医は、医師としての自分の業務が好きだから、医師として上達する。
お金持ちは、お金を増やすのが好きだから、お金持ちになれる。
使える時間が限られている以上、原理的に上の2つは両立しない
と述べてあります。
個人的にミソとしては、最後の方に書かれていた、
日本では国民皆保険制度によって、診察料が一律で定められているので、希少性の高い人材だからといって高いフィーを発生させることができない。
という部分に注目しました。
いくらオペがうまい外科医でも患者さんに人気の高い内科医でも、勤務医である限りは原理的に給料は高くならないわけです。
もっと言うと、名医は名医であるがゆえに発生する名誉や周囲からの高い承認、自分の目指す医療が行い易い環境にある、という面で満足する部分が多く、それこそ労働力の再生産にかかるコストが少ないのかもしれません。
市場から切り離されているように見える保険診療の世界にあっても資本主義社会における労働力再生産のループから逃れることは不可能で、労働者がやりがいや名誉という報酬を受け取ると金銭を犠牲にしてしまうのは仕方ないことなのです。 https://t.co/Pe8f0LG6Hs
— ピエール@新日本専門医機構公式 (@shameofirongate) December 31, 2020
ドロッポ医の方が、そういう意味でもたくさん給料がないとやってられない、みたいなこともある意味あるのかもしれません。
ちきりんVoicyでは、ロベール・ドアノーの話が出てきました。
この「パリ市庁舎前のキス」という写真で有名な写真家です。
ロベール・ドアノーは、自分のことをずっと「職業写真家」だと言っていたそうです。周りからみれば芸術家として見えていたと思うのですが、本人は職業としてやっているというつもりだった、というのが面白いですね。
物書きの世界でも、コンテンツを自分で作れる「作家」と、それを文章に読みやすく書き起こす「ライター」という仕事で分かれるそうですが、それぞれの得手不得手なだけで、決して作家がライターよりも上である、と捉えてはいけないそうです。
以上を聞いて、医者の仕事でも「作家よりの仕事」もあれば、「ライターよりの仕事」もあるんじゃないかな、とふと思いました。
ラス先生の言う「名医」ならずとも、僕の個人的な意見ですが「外科医」なんていうのは「作家よりの仕事」のように見えます。
一方麻酔科医は「ライターよりの仕事」なんじゃないだろうか、と。
いろんな意見はあると思いますが。
麻酔の仕事には、基本的には周りからみて分かりやすいクリエイティビティなんていらないと思っています。自分の中でいろいろとこだわりはあるにせよ。
外科の先生の仕事を見ていると、今の医療では概ね決まりきったことをやるだけとはいいっても、やはり僕からみるとクリエイティブな発想を常にもってされているように感じます。
重要なのは、その2つはどちらが上も下もないということなんですよね。ロベール・ドアノーですら、自分を「職業写真家」として捉え、それを誇りに思っていたわけですから。
勘違いしている人もいるようですけど。
そういえば、例の脳外科医アカウントの本源的な問題点は、勤務医間で値打ちのある人間と無い人間がいると思っていることなんですよね。世の中で手術は外科医がやり、麻酔は麻酔科医がやることになっている以上、双方単なる組織の歯車として働いているだけで100%原理的に価値は同じなわけです。
— ロスジェネ勤務医 (@losgenedoctor) February 21, 2021
一人の勤務医(サラリーマン)としては、立派な歯車として頑張って目の前の症例の麻酔を安全に行っていく、それしかないなぁ、などどこういう話を考えてふと思いました。働いている現場や、ネットなどを見ると心のなかでいろいろとさざ波が立つことがあるのですが、できるだけそういうノイズに惑わされないようにやっていきたいですね。