こんにちは、コッカーマリン(@losgenedoctor)です。
エアロゾルボックスの話題です。
田中竜馬先生のツイートで知りましたが、FDAからエアロゾルボックス(挿管ボックス)を推奨しない、との発表がありました。
一世を風靡した「挿管ボックス」なのですが、気管挿管の成功率が下がって、患者さんが低酸素血症になることが増えて、PPEが傷付いたりもして、場合によっては、医療者のコロナウィルス暴露が増えたりもするので、使わないように、との推奨がFDAから発表されました。https://t.co/Gr2i1SYggZ
— 田中竜馬 (@ryoma_tanaka) August 28, 2020
FDAは新型コロナが猛威をふるっていた今年の5月に、検証は不十分ながらも良さそうだということで「挿管ボックス」の使用に緊急使用許可(EUA)を出していましたが、いくつかの論文で挿管ボックスむしろ危なくないか?というものが出てきたのでこういう発表をすることになったのでしょう。
この論文ではエアロゾル発生モデルを用いてエアロゾルを発生させ、挿管する位置に立つ医療者の顔周辺でのエアロゾルへの暴露を測定するということをやっています。
エアロゾルにもいろいろあり、微妙にそのサイズによっても違うようですが、ざっくりいうと「挿管ボックスを使用することによってむしろ医療者への暴露は増える可能性がある」ということが述べられています。
僕もコロナ対策しないといけない、ということでいろいろ調べたり早めに業者さんと直接やりとりして挿管ボックスを手に入れて使っていたクチなのですが、心地よいくらいバッサリ否定された感じです。
また他の参考文献で、エアロゾルボックスを使うことで挿管に時間がかかる or 一発で成功しない確率が上がるので、そういう意味でもむしろ良くない、ということもあるようです。
コロナ対策の挿管は、とにかく手早く一発で決めるのが重要だ、ということですね。
にしても ...実物見たり頭で考えたりすると、挿管ボックスすごく良い物に見えるんですが、実際測定してみるとむしろ何も無いときよりリスクが上がるという話は面白いなぁと思います。
これに限ったことではなく、医学では自分の頭で想像したことが実際調べてみると全然違っているということがよくありますよね。
なので独善的に「自分がいいと思う自分なりのやり方」に固執せず、世界中でしっかりとなされた研究を日々しっかりと見て学ばないといけないなぁ、と改めて感じました。
で、どのような防護をすればいいのかということですが。。
とにかく下の図の(a)のような形のエアロゾルボックスはとりあえず使うのはやめようと思います。
おそらく手が入るところからエアロゾルがジェットのような形で挿管者の方へ流れてくるという理屈でしょう。それはちょっと分かりますよね。
論文では(b)の"Vertical plastic sheet"などは多少有用そうだと示されているようですが、要するにエアロゾルをこっちにこさせないだけで、部屋中に飛散させているということなんだと思います(その分挿管者にくる量が薄まるだけ)。
看護師が足元にいたら暴露はエアロゾルボックスを使っているときより増えるはずなので、完全にエアロゾルボックスを互換できるようなものではなさそうです。
難しい。全員部屋から出してN95つけた自分一人で挿管抜管するのがいいのかもしれません。
どちらにしてもこれまでのやり方で医療者をエアロゾルの暴露から逃れさせるためにはボックスの中を陰圧にする仕組みがないと難しいのではないかと思いました。
それって結構コストもかかりそうです。
費用対効果的にペイするのかどうか、そのあたりでしょう。
どちらにしても今の麻酔科医はこのコロナがまだまだ市中に隠れている状態で麻酔しないといけないわけなので、結構リスクあると思いました。
道具使って防御しているつもりでも実は全然できていない。
いろいろと考えさせられました。