こんにちは、コッカーマリンです。
この度二年に一回の診療報酬の改定の内容が決定しました。
麻酔科診療に対しても当然診療報酬に基づいた請求が行われているわけで、一度麻酔科の診療報酬について述べてみたいと思います。
今年の改定の内容に関しては後日に回すとして、今現在の麻酔科の診療報酬をみてみます。
麻酔科の診療報酬は医科診療報酬の
第2章 第11部 麻酔
のセクションにあります。
第11部の中で、麻酔科の関わる請求は1〜4節の4つに分けられていて、
第1節が手術のための麻酔の手技代
第2節が痛みの治療のための手技代
第3節が薬代
第4節が医療材料代
といった分類に大体なっているようです。
いわゆる「麻酔科のやる全麻」のほとんどは第一節の中のL008です。
麻酔科はL008でメシを食ってるわけです。
これいつも見て面白いな、と思うのはほとんどの麻酔は一番下の6000点のやつなのに特殊なのから並べられてるんですよね。なんでなんでしょう。
麻酔の点数を正確性を無視して分かりやすく書き換えると
- 普通の全麻→6000点(*6万円です)
- 腹腔鏡のオペ・側臥位のオペの麻酔→6000点+10%
- 伏臥位のオペの麻酔→6000点+50%
- 坐位の脳外科手術・分離肺換気を行う手術・一部の心臓手術の麻酔→6000点+100%
- 人工心肺使う心臓手術の麻酔→6000点+200%
-
以上の加算にプラスして、患者が「麻酔科困難な患者」に当てはまる場合、
+約38%
となります。
実はかなりはしょってます*1
例えば分離肺換気をする手術で麻酔困難患者の場合
(6000点+6000点(100%))×1.38で16560点くらい(実際には16600点ですが)になる、ということです。
ちなみに気づくと思いますが心臓麻酔というのが点数すごく高いんですよ。
時間の長い人工心肺を使うようなオペを、麻酔の診療報酬の〇〇%とかで請け負うタイプの契約だとすごいことになります。。
麻酔困難患者とは麻酔のリスクが特に高いとして指定されている状態の患者で、麻酔科なら普通みんな知っています。
L000からL010みてると結構面白いです。
L000の「迷妄麻酔」というのは吸入麻酔で10分以下の麻酔を行ったとき、というやつみたいですが、これ麻酔科医でもあんまりピンとこない言葉で、「今日俺迷妄麻酔やったわ〜」とかいうのは聞いたことないですね。
どうやら麻酔の診療報酬で想定されているのは、外来の処置室みたいなところにガスを流すだけの麻酔器があって、オペ室に「閉鎖式のイケてる麻酔器」がある、っていう状態みたいで、L000は外来で脱臼を整復するのに吸入麻酔をちょろっと吸わせてやる、みたいなやつを想像したら分かりやすいですかね。
L001-2の「静脈麻酔」 というのは点滴からちょろっと麻酔薬入れて眠らせる麻酔のことを指すらしく、1-3に分けられています。
1は内視鏡検査等で内科医がドルミカム入れたりしてるやつがあてはまりそうです。まぁ10分超えたら正確には2になるんですが、2,3は麻酔器がすぐそばにないとだめで、3は特に麻酔科医がそれ用にそこらへんにいないとだめ、というルールがあるようです。
ちょっとややこしいですね。
2はオペ室で、10分以上かかる局麻オペを点滴からなにか入れて鎮静してやるみたいな状況が当てはまるでしょうか。脳外科の慢性硬膜下血腫のオペとかでしょうかね。
3はMACみたいなやつを想定したらいいんでしょうか。婦人科の円錐切除みたいなのを麻酔科医がプロポフォールで寝かせてやる、みたいなのを想像すると分かりやすいかもしれません。あと、眼科の手術の鎮静を麻酔科医が担当していれば3になるでしょうね。
L003 「硬膜外麻酔」単独で麻酔やることってそんなにないですよね。帝王切開で何回か経験あるかな、という程度です。
L004 「脊椎麻酔」850点がやたら低いので、麻酔科医一人をこれにつけてやらせるのはコスパが悪すぎるのでは、という話は昔からありあます。
面白いのはL007「開放点滴式全身麻酔」というやつで、言葉のままいうとエーテルをオープンドロップして吸わせる麻酔のことです。昔は今みたいな気化器を使わず、すごく蒸発しやすい麻酔薬を直接患者に吸わせてたんですね。
一応今はL000の時間が長い版、10分以上ガス麻酔をした場合にとるということみたいですが、こんなので請求することまずあまりないんじゃないでしょうか(点数も低いし)。
L009 麻酔管理料1 とL010 麻酔管理料2は海よりも深い話があって難しいのですが、診療報酬の査定の際、一番キモになる部分のようで、麻酔科で偉くなった先生たちが結構頭を悩ませる部分でもあります。
要は常勤麻酔科(標榜医)が術前術後をしっかりとみているかどうかを評価しようとする保険点数です。
麻酔管理料1と2の違いは、麻酔管理料1は麻酔科の常勤の標榜医以上が自分で麻酔の術前術後、麻酔の実際の手技をやった場合にしか算定できないのに対し、麻酔管理料2では麻酔の術前術後診察は研修医でもOK、麻酔の手技も常勤の標榜医の見ている前でやっていれば研修医がしてもOKということです。
ここでいう研修医はアルバイト医でも同じことです。
また施設基準が1と2で違っていて、麻酔管理料2をとるには常勤の標榜医が5人以上いないと駄目だそうです。
今回の改定で麻酔管理料2が麻酔看護師が麻酔したときでも取れるようになったみたいですね。麻酔管理においては、麻酔科ローテ中の研修医と麻酔看護師を完全に同じ扱いにする方向はもう変わらないようですね。
L200 の薬剤料ですが、大体オペ室で麻酔科医が使う薬はDPCの病院であっても全部請求できるんですね。
これが結構重要で、つまり麻酔科は薬使い放題なんです。
日本の麻酔科医が高くていい薬を使い放題なのは、結構特殊なことなんですよ。
レミフェンタニルとかブリディオンとか、アメリカなんかではあんまり使われていない薬が日本ではバンバン売れているんですね。
この辺は僕が医療費を削減する側になったら問題視するところだろうなぁ、とはたまに思います。
結構みんな麻酔の診療報酬については知らなくて、ちょっとまずいんじゃないか、と思うことはあります。
ここに全部のことを書いたわけではないですが、麻酔科医なら一通りは知っておくべきかもしれませんね。