ロスジェネ勤務医の資産形成ブログ

ロスジェネ世代麻酔科医師のコッカーマリンです。資産形成や日々のことについて感じたことを書き綴ります。

麻酔科術前診察は本当に必要なのか?

こんにちは、コッカーマリンです。

 

麻酔科が行う、麻酔の術前診察。

患者さんの既往歴や合併症、検査結果などを検討してリスクを評価し、また患者さんに麻酔方法や手順、考えられるリスクなどを説明するわけです。

 

術前診察のやり方は施設によっていろいろあります。

小さい施設なら担当症例は自分で評価して手術の合間を縫って病棟まででかけていって患者さんやご家族に説明するという形でしょうか。

ある程度大きな施設なら術前担当医みたいなのが一日一人決まっていて、オペを予定されている患者さんを術前外来という形の外来に枠をとって順番に来てもらうシステムを作って、説明して同意書をとっていく、、という感じが多いと思います。

 

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「麻酔科の術前診察は本当に必要か」

という話ですが、そりゃ必要に決まっています

いっぱしの麻酔科医なら顔をみた瞬間に気道のトラブルが起きる確率が高いかどうかある程度わかるし、それなりの準備ができますから。

一方患者さんにとってみたらどんなことをされるのか全然分からない状態で手術室へ向かうのと、ある程度説明聞いた上で行くのとではぜんぜん違うはずです。オペ室に着いたときに知ってる顔があったら安心するかもしれません。

 

しかし、実際に麻酔科の術前診察がすべての麻酔症例でしっかりと有効に働いているのかどうかは疑問です。

 

例えば術前外来のシステムで一人の先生が次の日の症例を全部術前評価しているような感じだと、自分の症例ではないのでどこか気持ちが抜けがちだと思いますし、麻酔を担当する先生も忙しかったら術前評価を外来担当の先生に丸投げするなんて場面もよくあります。

 

自分で病棟まで出向くシステムだと、患者さんがいなかったら無駄足になるし、なにより患者側が麻酔の医者というものの重要性を認識しにくくなるというデメリットもあります。部屋にいてあっちからやってくる医者(とすら認識していないことも多い)より、時間を決められて自分から会いに行かないといけない医者の方が値打ちがあるように思えるもんです。

 

僕は思うんですが、

どんな便利なシステムを構築しても、麻酔の医者が自分の症例をしっかりと自分ごととしてちゃんと向き合う、これがとにかく大事。

患者さんの一般的なリスクを評価するのは当たり前で、その人のナラティブ的なものも多少は含めて理解しておかないと麻酔の説明をしても全然伝わらないし、「麻酔科の先生に話してもらったから安心しました」とはならない。

 

術式もある程度は分かっておかないとダメです。

この症例はどこが外科医にとって気がかりなのか、大体はわかっておかないといけない。

 

リスクをいちいちどんな患者にも同じように棒読みで早口で話す(よくそういうタイプ見かけます)のもダメです。いくら説明していたといったって、免責になることを期待するのは間違っていますよ。

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しかしです。

僕の感覚では、教科書に書いてあるような「麻酔術前診察の利点」みたいなのをフルで発揮できている麻酔術前診察は日本で行われている全症例の1割もないんじゃないかと思っています。

どこの病院に行っても実にいい加減な術前評価がなされていて、それを誰も問題だと思っていない。

 

これだけ日本全国で長く麻酔科診療が続けられてきてこの程度なら、むしろ諦めてもう麻酔科の患者さんへの直接の説明なんてのはあんまりなくていいんじゃないかとすら思っています。

冊子渡してリスクに同意したことにしてサインさせる、それでも問題はそんなにおきそうにもないし。

 

とにかく

麻酔の術前診察をちゃんとやっていて、患者さんはそれで不安が軽減されているはずである

という嘘を嘘として認める必要があるんじゃないでしょうか。